下肢静脈瘤とは
下肢静脈瘤は、足の静脈が拡張し、ねじれ、突出する状態を指します。この状態は、血液が心臓に戻る流れが悪くなり、静脈内の圧力が上昇することで発生します。主に脚に見られ、美的な問題だけでなく、痛みや不快感を引き起こすことがあります。正常な場合、静脈内の弁が血液を一方向にしか流れないようにしていますが、これらの弁が弱くなると血液が逆流し、静脈内に溜まります。
発生のメカニズム
静脈瘤は、静脈弁の不全によって発生します。弁の機能不全が起きると、血液が下肢に逆流し、静脈内の圧力が増加し、静脈が拡張して静脈瘤を形成します。時間が経つにつれて、これらの静脈はさらに損傷し、症状が悪化します。
リスクファクターと原因
下肢静脈瘤の発生には複数のリスクファクターが関与しています。これらには遺伝的要因、生活習慣、職業などがあります。立ち仕事や妊娠などが関係し、女性の方が2〜3倍多いと言われています。
遺伝的要因
遺伝は下肢静脈瘤の重要なリスクファクターです。家族歴がある人は、静脈瘤を発症するリスクが高くなります。これは、静脈弁の弱さが遺伝する可能性があるためです。
生活習慣と環境因子
肥満、運動不足、長時間立ち仕事をすること、高いヒールを頻繁に履くことなどの生活習慣も、静脈瘤のリスクを高めます。これらの要因は、下肢への圧力を増加させ、静脈弁に負担をかけることが原因です。
職業と姿勢
長時間立ち続ける職業に就いている人は、静脈瘤を発症するリスクが高くなります。同様に、長時間座り続けることも血流の悪化を引き起こし、静脈瘤のリスクを高めます。
心臓と下肢静脈瘤の関係性
人体の循環系は、心臓、血管、血液から構成され、身体全体に酸素、栄養素、ホルモンを運び、代謝産物の排除を行います。この循環系の中で、心臓と下肢静脈瘤の関係性は特に興味深い領域です。以下では、循環系の役割と重要性、静脈還流のメカニズム、そして心臓がこれにどのように影響するかについて詳しく説明します。
循環系の役割と重要性
循環系は、生命を維持するために不可欠なシステムです。心臓はこのシステムの中心にあり、ポンプとして機能し、血液を体中に送り出します。血液は、酸素と栄養素を動脈を通じて細胞に運び、二酸化炭素などの代謝産物を静脈を通じて回収し、肺や腎臓などの器官で処理されるように運びます。この効率的な交換プロセスがなければ、細胞は生存や機能を続けることができません。
静脈還流のメカニズムと心臓の影響
静脈還流は、使用された血液を心臓に戻すプロセスです。このプロセスは、心臓のポンプ機能と、以下の3つのメカニズムによって促進されます。
筋肉ポンプ
歩行時などの筋肉の収縮が静脈血を心臓に押し上げます。
呼吸ポンプ
呼吸による胸腔内の圧力変化が静脈血流を促進します。
静脈弁
静脈内の一方向弁は血液が下方向に流れるのを防ぎ、心臓へ戻るのを助けます。
心臓は、収縮と拡張を繰り返すポンプ機能によって、血液を全身に送り出すと同時に、静脈系から血液を吸引し、心臓に戻す力(吸引力)を生み出します。この吸引力は、静脈還流を促進する重要な役割を果たします。
重力対抗の血液循環
下肢は、重力による影響を受けやすい身体の部位です。立っているとき、重力は血液が心臓に戻るのを阻害し、静脈圧を上昇させます。また、長時間座っていることや、肥満、妊娠なども静脈還流を妨げる要因となります。この問題を克服するため、人体はいくつかのメカニズムを使用します。例えば、筋肉ポンプの作用により、歩行時などの筋肉の収縮が静脈血を心臓に押し上げます。また、静脈内の一方向弁は血液が下方向に流れるのを防ぎます。
心臓のポンプ機能と静脈系
心臓のポンプ機能は、静脈還流を促進する上で重要な役割を果たします。心臓が収縮すると、左心室から大動脈を通じて全身に血液が送り出され、同時に右心房から肺動脈を通じて肺に血液が送られます。この血液循環によって、体中の組織に酸素と栄養素が供給され、二酸化炭素などの老廃物が回収されます。
一方、心臓が拡張すると、右心房に体静脈から血液が流入し、左心房に肺静脈から血液が流入します。このとき、心臓の拡張によって生じる陰圧が、静脈系から血液を吸引し、心臓への血液流入を促進します。
具体的には、以下のメカニズムによって、心臓のポンプ機能が静脈還流を促進します。
心筋収縮による圧力差
心臓が収縮すると、左心室と右心室内の圧力が上昇し、大動脈と肺動脈に血液が押し出されます。この圧力差によって、静脈系から心臓への血液流入が促進されます。
心房拡張による陰圧
心房が拡張すると、心房内の圧力が低下し、静脈系から血液を吸引する陰圧が発生します。
弁の役割
心臓の弁は、血液の一方向の流れを確保し、逆流を防ぎます。これによって、静脈系から心臓への血液流入が促進されます。
下肢静脈瘤の原因と心臓疾患との関連
下肢静脈瘤は、静脈の壁や弁の損傷により血液が正常に心臓へ戻らず、足の静脈内に留まってしまう状態を指します。この状態は美容的な問題だけでなく、痛みや重さの感覚、さらには深刻な健康問題を引き起こすことがあります。心臓疾患、特に心不全は、静脈圧の増加に寄与し、下肢静脈瘤の発生や悪化に関与することがあります。静脈弁不全と血液逆流、心不全と静脈圧の増加、そしてこれらが下肢静脈瘤にどのように影響するかについて詳細に説明します。
静脈弁不全と血液逆流
静脈弁不全は、静脈の弁が正しく閉じないことにより血液が心臓へ戻らず、下肢に留まってしまう状態です。この状態は、血液が心臓へと効率的に戻ることを妨げ、静脈内の圧力を増加させます。時間が経つにつれて、この圧力の増加は静脈の壁を弱化させ、静脈瘤の形成を促進します。
心不全と静脈圧の増加
心不全は心臓が血液を効率的に全身にポンプすることができない状態を指し、この不全状態は下肢への血液の流れと静脈圧を増加させます。
心不全による静脈系への影響
心不全により、心臓は血液を効率的に全身にポンプすることができなくなります。その結果、血液は特に下肢の静脈内で滞留しやすくなり、静脈圧が上昇します。この圧力の増加は静脈弁にさらなる負担をかけ、既存の静脈瘤を悪化させることがあります。
下肢静脈瘤の症状と種類
下肢静脈瘤は、見た目の問題だけでなく、痛みや不快感を伴うことがあります。初期段階では、症状が軽微であるか、全く感じられないこともありますが、状態が進行するにつれて、より顕著な症状が現れるようになります。また、静脈瘤には大きく分けて4つの種類があります。
主な症状と識別ポイント
下肢静脈瘤の症状は個人差がありますが、以下のような典型的な症状があります。
- 脚の重だるさや疲れやすさ
- 脚の痛み、痒み、または燃えるような感覚
- 膨らんだ静脈が肌の表面に見える
- 夕方になると脚の腫れが増す
- 長時間立っていると症状が悪化する
さらに下肢静脈瘤が進行すると、色素沈着(皮膚の色が黒っぽくなる)、皮膚硬結(皮膚が硬くなる)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、皮膚潰瘍(皮膚が崩れえぐれたようになる)などの症状が現れ、少しずつ悪化していきます。これらの症状は日常生活に影響を及ぼす可能性があり、早期発見と治療が重要です。
下肢静脈瘤の種類
下肢静脈瘤は大きく分けて、伏在型・側枝型・網目状・くもの巣状の4種類に分類されます。一般的に外科的治療が必要となるのが伏在型静脈瘤です。以下4種類の下肢静脈瘤について詳しく説明します。
伏在静脈瘤
足の最も太い表在静脈(皮下静脈:直径4mm以上)である「大伏在静脈、小伏在静脈」に形成される静脈瘤で、下肢静脈瘤の約70〜80%と最も多くみられる静脈瘤です。
大伏在静脈瘤
くるぶしから始まり、脚の付け根(鼡径部)で大腿静脈と合流する体表の中で最も長い静脈です。足のつけ根の静脈弁が壊れておこり、膝の内側に静脈瘤が見られます。
小伏在静脈瘤
ふくらはぎの後面を走行し膝の裏で膝窩静脈に合流する静脈であり、大伏在静脈と同様に弁不全により逆流が起き、ボコボコとした静脈瘤ができます。
側枝型静脈瘤
主に、ふくらはぎの部位で多くみられ、伏在静脈から枝分かれした静脈(皮下静脈:直径約3〜4mm)で、さらに分岐した先にある枝の一部が膨らむ静脈瘤です。分枝静脈瘤ともいいます。
網目状静脈瘤
青色に浮き上がってみえるのが特徴であり、皮下の浅いところにある細い静脈(皮下静脈:直径約2mm)が拡張してできた静脈瘤です。網の目にみえることが多いため、網目状静脈瘤といわれています。
クモの巣状静脈瘤
血管がクモの巣のように放射状に広がって見えるのが特徴であり、皮膚に近くとても細い静脈(真皮内静脈:直径1mm以下)が拡張してできた静脈瘤です。
下肢静脈瘤の診断
下肢静脈瘤の診断に使用される主な検査方法について詳しく説明します。
下肢静脈の超音波検査
下肢静脈瘤の診断には、主に超音波検査が利用されます。この検査は非侵襲的で、静脈の構造、血液流動の方向、および静脈弁の機能を詳細に評価することができます。超音波検査を通じて、医師は静脈内の血液逆流の有無や、静脈弁不全の程度を特定でき、これにより正確な診断が可能となります。下肢静脈瘤が重症の場合は、造影剤を用いた静脈造影や、CT検査、MRI検査などの画像検査が必要となることもあります。
超音波検査は、エコープローブ(音波を出して静脈を視察する端子)にゼリーを付着させて、患部にプローブを軽く当てると、リアルタイムでモニターに静脈の状態を確認する事が出来ます。患部の場所によってははっきり見えない等、画面で確認が難しい場合もありますが、血管の内径を計ったり、血流の方向とスピードで逆流を確認するドプラ血流系による検査、血流に色をつけて逆流の有無を確認するカラードプラ検査を行います。
治療法と予防策
下肢静脈瘤は、多くの人々に影響を及ぼす一般的な状態であり、時には重度の不快感や合併症を引き起こすことがあります。幸いなことに、下肢静脈瘤には様々な治療オプションが存在し、適切な生活習慣の採用と予防策を講じることで、そのリスクを減少させることが可能です。このセクションでは、下肢静脈瘤の治療法と予防策について詳細に説明します。
下肢静脈瘤の治療
下肢静脈瘤の治療は、症状の重さ、静脈瘤の大きさ、および患者の全体的な健康状態によって異なります。治療には、保存的治療からより積極的な外科的治療までがあります。
保存的治療
圧迫療法
圧迫療法は、下肢静脈瘤の最も基本的な治療法の一つであり、圧迫ストッキングの使用を通じて静脈内の圧力を低減し、血液の循環を改善します。
圧迫ストッキングの種類と使用方法
- 医療用圧迫ストッキング:医療用圧迫ストッキングには様々な圧迫レベルがあり、医師の指示に従って適切な圧迫レベルを選択する必要があります。
- 着用時間:通常、朝起きた直後に着用を開始し、就寝時に脱ぐことが推奨されます。
- 効果:圧迫ストッキングは、静脈内の血流を促進し、腫れや痛みの軽減に効果的です。
注意点
- 正しいサイズのストッキングを選ぶことが重要です。
- 長期間にわたる使用には、定期的な評価とストッキングの交換が必要です。
生活習慣の変更
- 静脈瘤の管理において、生活習慣の変更は重要な役割を果たします。
推奨される生活習慣の変更
- 運動:定期的な運動は、脚の筋肉ポンプの機能を向上させ、血液の循環を促進します。特に歩行や水泳などの低衝撃運動が推奨されます。
- 体重管理:適正体重の維持は、脚への圧力を減少させ、静脈瘤の悪化を防ぎます。長時間の立位や座位の回避:長時間同じ姿勢を取ることは、静脈内の圧力を高めるため、定期的に立ち上がり、軽い運動を行うことが推奨されます。
薬物療法
特定の症状や状況下で、薬物療法が静脈瘤の管理に役立つことがあります。
使用される薬物の種類
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):腫れや痛みを軽減するために使用されます。
- 血液循環改善薬:血液の流れを改善し、静脈の機能をサポートします。
- 血栓予防薬:静脈瘤がある患者は血栓のリスクが高まるため、特定の状況下では血栓を予防する薬物が処方されることがあります。
注意点
- 薬物療法は、医師の指示に基づき、患者の状態に応じて適切に使用する必要があります。
- 薬物には副作用があるため、使用前に医師と相談することが重要です。
簡易的な保存的治療
足の挙上
定期的に足を心臓よりも高い位置に挙げることで、重力による影響を減少させ、下肢の静脈圧を低下させることができます。これは、静脈瘤による痛みや腫れを軽減するのに役立ちます。
実践方法
- 日中数回、足を10〜15分間心臓よりも高い位置に保持します。
- 睡眠中には、足元に枕やクッションを置くことで足をわずかに上げると効果的です。
足のマッサージ
足のマッサージは、血液循環を促進し、静脈瘤に関連する症状を緩和することができます。ただし、直接静脈瘤に圧力をかけることは避け、軽いタッチでのマッサージに留めることが重要です。
実践方法
- 足の裏から始め、ゆっくりとふくらはぎの方向に向かってマッサージします。
- 強すぎる圧力を避け、血液が心臓の方向に流れるように促します。
栄養補助
特定の栄養素が血液循環を改善し、静脈の健康をサポートすることが示されています。特に、ビタミンC、ビタミンE、およびフラボノイドを含む食品の摂取が推奨されます。
栄養補助のポイント
- ビタミンC:コラーゲンの生成をサポートし、血管の弾力性を高めます。
- ビタミンE:血液の流れを改善し、血栓のリスクを減少させます。
- フラボノイド:血管を強化し、炎症を抑える効果があります。
水分摂取の増加
十分な水分を摂取することは、血液の循環を改善し、静脈瘤による症状の管理に役立ちます。脱水は血液を濃縮させ、静脈圧を高める可能性があるため、定期的な水分補給が重要です。
手術
伏在型静脈瘤などの重症の下肢静脈瘤の場合、外科的手術が必要になることがあります。以下のような治療法があります。
硬化療法
硬化療法は、特別な化学溶液を静脈内に注射し、静脈を閉塞させることで血流を健康な静脈へと再分配する治療法です。この方法は、比較的小規模な静脈瘤や蜘蛛静脈に効果的であり、非侵襲的な選択肢として人気があります。
治療の流れ
- 準備:治療部位を消毒し、局所麻酔を行う場合があります。
- 注射:超音波画像を参考にしながら、特別な溶液を含む細い針を静脈に挿入します。
- 効果:注入された溶液が静脈壁を刺激し、閉塞を引き起こします。これにより、血流が健康な静脈に再分配されます。
- 回復:治療後は圧迫ストッキングの着用が推奨され、数週間で完全な効果が現れます。
注意点とリスク
- 一部の患者では皮膚の変色やアレルギー反応が発生することがあります。
- 再発の可能性があり、複数回の治療が必要になることもあります。
レーザー焼灼術
レーザー治療は、高強度の光を用いて静脈内の血液を加熱し、静脈を閉塞させる非侵襲的な方法です。この治療は、特に表面に近い静脈瘤に有効で、外科的手術に比べて回復時間が短いのが特徴です。
治療の流れ
- 準備:対象となる静脈の位置を特定し、局所麻酔を行います。
- レーザー照射:皮膚の上からレーザー光を静脈に向けて照射し、静脈内の血液を加熱します。
- 効果:加熱により静脈が閉塞し、血流が健康な静脈へと再分配されます。
- 回復:治療は通常、数十分で完了し、患者は直ちに日常生活に戻ることができます。
注意点とリスク
- 治療部位に一時的な赤み、腫れ、または痛みが生じることがあります。
- 稀に皮膚の火傷や色素沈着のリスクがあります。
外科的手術
静脈切除術は、問題のある静脈を外科的に除去する方法で、重度の下肢静脈瘤に対して行われます。この手術は、静脈の機能不全を直接的に解決し、長期的な解決策を提供します。
治療の流れ
- 準備:TLA麻酔(低濃度膨潤麻酔)または静脈麻酔や全身麻酔、脊椎麻酔が行われます。
- 手術:外科的手術は下肢静脈瘤の根本治療として行われ、主に以下の手術があります。
- ストリッピング手術
大腿部やふくらはぎの逆流してる静脈を皮下脂肪の中から抜去する方法です。
高位結紮術
逆流している静脈をしばって血が下に落ちないようにする方法です。
静脈瘤切除術
皮膚を切開して、目立つ瘤を直接取り去る方法です。
回復:手術後は入院が必要になることがあり、完全な回復には数週間を要します。
注意点とリスク
- 手術には感染、出血、神経損傷のリスクが伴います。
- 長期的な回復と圧迫療法が必要になる場合があります。
高周波熱焼灼法(Radiofrequency Ablation, RFA)
熱焼灼法は、高周波エネルギーを使用して静脈内の血液を加熱し、静脈を閉塞させる治療法です。レーザー治療と同様に非侵襲的であり、特に大きな伏在型静脈瘤に効果的です。
治療の流れ
- 準備:超音波を使用して治療対象の静脈を特定し、局所麻酔を行います。
- カテーテル挿入:皮膚に小さな穴を開け、カテーテルを静脈内に挿入します。
- 熱焼灼:カテーテルを通じて高周波エネルギーを静脈に送り込み、静脈を内側から加熱して閉塞させます。
- 回復:治療後、患者は圧迫ストッキングを着用し、ほとんどの場合、当日中に通常の活動に戻ることができます。
注意点とリスク
- 短期間の腫れや内出血が生じる可能性があります。
- 稀に皮膚感覚の変化や静脈炎を引き起こすことがあります。
心臓健康の促進と静脈瘤予防
心臓の健康は、下肢静脈瘤のリスクを減らす上で重要な役割を果たします。心臓と血管系の健康を維持することは、静脈瘤の予防にも役立ちます。
生活習慣の改善
健康的な食事:
心臓に優しい食事は、血管の健康を促進します。
定期的な運動:
血液循環を改善し、静脈系の健康を支えます。
禁煙:
喫煙は血管を狭め、血流を悪化させるため、静脈瘤のリスクを高めます。
定期的な医療チェックアップ
定期的な健康診断:下肢静脈瘤の初期兆候や心臓疾患のリスク因子を早期に特定することができます。
よくある質問
こちらのコラムの内容の要点を「よくある質問」からまとめています。
下肢静脈瘤とは何ですか?
下肢静脈瘤は、足の静脈が拡張し、ねじれて突出する病状で、血液が心臓に戻る流れが悪くなることで発生します。主に脚に見られ、美的な問題だけでなく、痛みや不快感を引き起こすことがあります。
下肢静脈瘤の原因は何ですか?
下肢静脈瘤の主な原因は静脈弁の不全で、血液が下肢に逆流し静脈内圧が増加することで発生します。遺伝的要因、肥満、長時間立ち仕事、高いヒールの使用などもリスクを高めます。
下肢静脈瘤の症状にはどのようなものがありますか?
下肢静脈瘤の症状には脚の重だるさ、疲れやすさ、痛み、痒み、膨らんだ静脈の見える化、脚の腫れなどがあります。進行すると色素沈着や皮膚潰瘍など深刻な症状を引き起こすことがあります。
下肢静脈瘤はどのように診断されますか?
下肢静脈瘤の診断には主に超音波検査が用いられ、静脈の構造、血液流動の方向、静脈弁の機能を詳細に評価します。重症の場合はCT検査やMRI検査が必要となることもあります。
下肢静脈瘤の治療法と予防策にはどのようなものがありますか?
下肢静脈瘤の治療には圧迫療法、薬物療法、硬化療法、レーザー治療、外科的手術などがあります。予防策としては適正な体重の維持、定期的な運動、長時間の立位や座位の避けること、健康的な食事が挙げられます。
まとめ
循環系の健康がいかに全身に影響を及ぼすか、特に心臓の機能と下肢静脈瘤の発生・進行との間には密接な関連があることがお分かりいただけたかと思います。心臓の健康が血液循環に及ぼす影響、静脈弁不全や心不全が下肢静脈瘤に与える影響、そしてこれらの症状を診断し管理するための方法についても触れました。
今回の情報が、皆さんの健康管理に役立つ知識となり、より良い生活習慣の選択や、必要に応じて専門家に相談するきっかけになれば幸いです。
関連コラム
【参考文献】
・日本静脈学会
下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術のガイドライン2019
https://js-phlebology.jp/?p=2567・日本皮膚科学会
下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1380006822_2.pdf
心疾患情報執筆者
竹口 昌志
看護師
プロフィール
看護師歴:11年
《主な業務歴》
・心臓血管センター業務(循環器内科・心臓血管外科病棟)
・救命救急センター業務(ER、血管造影室(心血管カテーテル、脳血管カテーテル)
内視鏡室、CT・MRI・TV室など)
・手術室業務
・新型コロナウイルス関連業務
(PCR検査センター、コロナ救急外来、HCU、コロナ病棟、コロナ療養型ホテル、コールセンター)