株式会社増富

高度管理医療機器等販売業 許可番号 第100327号

  • 心臓の基礎
  • 心疾患の基礎
  • 不整脈
  • 虚血性心疾患
  • 心臓弁膜症
  • 静脈系疾患
  • 動脈系疾患
  • 大動脈疾患
  • 先天性心疾患
  • その他心疾患
  • 心臓手術
  • カテーテル治療
  • 機械的補助循環装置
  • 入院~退院後の流れ
  • 心疾患に関する情報

虚血性心疾患

臍帯(せいたい)血幹細胞を用いた心筋梗塞治療

心疾患に関する情報

画期的なバイオインプラント「PeriCord」

心筋梗塞治療の新たな扉を開く可能性を秘めた、バイオインプラント「PeriCord」。
この革新的な治療法は、患者の臍帯血幹細胞と組織提供者から提供された心膜を組み合わせることで、損傷した心臓組織の再生と血管新生を促進します。

Germans Trias i Pujol 研究所 (IGTP) と Banc de Sang i Teixits (BST) の ICREC (心不全および心臓再生) 研究グループによって開発されたPeriCordは、3年以上にわたる臨床試験において、7名の患者に対して実施されました。
その結果、PeriCordは優れた生体適合性を示し、拒絶反応は一切認められませんでした。
この画期的な研究成果は、権威ある医学誌であるMedicalxpress誌に2024年4月5日に公開されています。

世界で初めて細胞と組織を組み合わせた、全く新しいタイプの治療薬

PeriCordは、臍帯血幹細胞と組織提供者からの心膜幹細胞を用いた、世界初の組織工学製品です。
実験室で最適化された細胞と組織を組み合わせることで、従来の治療法では成し得なかった心臓組織の再生を目指します。

臨床試験の内容と結果

PeriCordの臨床試験は、冠動脈バイパス術を受ける患者12名を対象に行われました。

  • 7名にはPeriCordを移植
  • 5名にはPeriCordを移植せず従来の治療

その結果、PeriCord移植グループにおいて以下の点が確認されました。

  • 優れた生体適合性
  • 拒絶反応のリスクの大幅な抑制
  • 抗炎症作用
  • 1年後、移植された組織は心臓の構造に完全に接着し、心臓発作による傷跡を覆っていた。

これらの結果は、PeriCordが心筋梗塞治療における新たな選択肢となるだけでなく、炎症性疾患への応用など、その可能性は無限に広がっています。

PeriCordによる修復プロセスの仕組み

心筋梗塞は、心臓への血流が途絶えることで心筋細胞が死滅し、心臓のポンプ機能が低下する深刻な疾患です。PeriCordは、冠動脈バイパス術と併用して用いることで、以下のメカニズムで心臓機能の回復を促します。

  1. 冠動脈バイパス術により、閉塞した血管を迂回して心臓への血流を回復します。
  2. バイパス術と同時に、PeriCordを梗塞によって損傷した心臓組織に移植します。
  3. PeriCordは、損傷部位において組織修復に関与する細胞メカニズムを活性化し、瘢痕組織の形成を抑制しながら心臓組織の再生を促進します。

患者さんの生活の質向上に向けて

PeriCordは、心筋梗塞によって生活の質や平均余命が低下した患者さんにとって、新たな希望となる治療法です。

BSTの細胞および先進治療サービス責任者であるSergi Querol博士は、「赤ちゃん誕生時に自発的に提供された臍帯血と、組織提供者の方々から提供された心膜組織。これらとドナーの方々のおかげで、患者さんの生活の質を向上させることができる新しい治療ツールを提供できることを考えると、非常に嬉しく思います。」と述べています。

将来的にPeriCordは、心臓再生医療の未来を大きく変える可能性を秘めた、まさに革新的な治療法と言えるでしょう。

よくある質問

こちらのコラムの内容の要点を「よくある質問」からまとめています。

PeriCordとは何ですか?

PeriCordは、臍帯血幹細胞と組織提供者から提供された心膜を組み合わせたバイオインプラントで、心筋梗塞治療において心臓組織の再生と血管新生を促進する革新的な治療法です。

PeriCordの臨床試験の結果はどうでしたか?

臨床試験では、7名の患者にPeriCordを移植した結果、優れた生体適合性が確認され、拒絶反応は一切認められませんでした。また、抗炎症作用が確認され、心筋梗塞治療における新たな選択肢として期待されています。

PeriCordの修復プロセスはどのように機能しますか?

PeriCordは冠動脈バイパス術と併用され、閉塞した血管を迂回して心臓への血流を回復します。同時に移植されたPeriCordは損傷部位で組織修復メカニズムを活性化し、瘢痕組織の形成を抑制しながら心臓組織の再生を促進します。

PeriCordの開発者は誰ですか?

PeriCordは、Germans Trias i Pujol研究所 (IGTP) とBanc de Sang i Teixits (BST) のICREC (心不全および心臓再生) 研究グループによって開発されました。

PeriCordの将来の応用可能性は?

PeriCordは心筋梗塞治療だけでなく、炎症性疾患への応用など幅広い医療分野での可能性を秘めています。心臓再生医療の未来を大きく変える革新的な治療法として期待されています。

【参考文献】

Medical press(2024年4月5日公開)
https://medicalxpress.com/news/2024-04-clinical-trial-cardiac-bioimplants-treatment.html

心疾患情報執筆者

心疾患情報執筆者

増田 将

株式会社増富 常務取締役

プロフィール

医療現場支援歴:10年
《主な業務歴》
・医療現場支援歴:10年
・循環器内科カテーテル治療支援:3,000症例
・心臓血管外科弁膜症手術支援 :700症例
・ステントグラフト内挿術支援 :600症例