低侵襲心臓手術(MICS)とは
従来の心臓手術は、胸の中央の皮膚20〜25cm程度切開し、胸骨を切り開いて行う“胸骨正中切開”で行われることが一般的でした。しかし胸骨正中切開では、皮膚を大きく切ったり骨を切ったりするため、患者さんの体の負担が大きいことが問題となっていました。
そこで近年は、より患者さんの体に負担のかからない手術方法として“低侵襲心臓手術(MICS)”が行われています。MICSとは、従来行われていた胸骨正中切開よりも小さい傷で行う心臓手術のことをいいます。術式ではなく、“どのように心臓までたどり着くか”というアプローチ方法の1つです。傷が小さく出血量が少ないため、従来の心臓手術よりも患者さんの体に負担がかかりにくいことが特徴です。
低侵襲心臓手術(MICS)の適応疾患
低侵襲心臓手術(MICS)のメリット・デメリット
低侵襲心臓手術(MICS)のメリット
切開創が小さいため、以下のようなことから早期の回復が見込まれ、患者さんの負担を軽減することができます。
出血量が少ないため体の負担が少ない
胸骨を切離しないため、運動制限がなくリハビリを早く開始できる、早期に退院できる
胸骨を切離しないため感染リスク低い
女性では、傷口が乳房に隠れて目立ちにくく、美容的に見た目が良い。
低侵襲心臓手術(MICS)のデメリット
MICSは切開創が小さく術野が狭くなることで手術は難しくなり、手術時間が通常より長くなる場合がある。また複雑な手術手技ができない場合がある。
MICSでは人工心肺を末梢動静脈から装着するので、鼠径部、頸部血管を損傷する可能性がある。
MICSは多くの場合術野側の肺を虚脱させる(分離肺換気)ので肺疾患合併症例(慢性閉塞性肺疾患COPD、間質性肺炎)の術後肺炎リスクが高まる可能性がある。
入院~退院後の流れと、リハビリについて
心臓手術を受ける患者の入院から退院後に至るまでのプロセスと、心臓リハビリテーションについては以下のリンクをご参照ください。
入院中のケアから、退院後の生活への適応、そして心臓リハビリテーションを通じての健康回復と生活質の向上に至るまで、ご紹介しています。
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心疾患情報執筆者
竹口 昌志
看護師
プロフィール
看護師歴:11年
《主な業務歴》
・心臓血管センター業務
(循環器内科・心臓血管外科病棟)
・救命救急センター業務
(ER、血管造影室[心血管カテーテル、脳血管カテーテル]
内視鏡室、CT・MRI・TV室など)
・手術室業務
・新型コロナウイルス関連業務
(PCR検査センター、コロナ救急外来、HCU、コロナ病棟、
コロナ療養型ホテル、コールセンター)