川崎病の概要
川崎病は、1967年に日本の小児科医の川崎富作医師によって発見された全身性の血管炎であり、主に5歳以下の乳幼児に見られ、特に1歳~2歳の間で最も発症しやすい後天性心疾患です。未治療の場合、25%の確率で生命にかかわる重大な合併症である冠動脈瘤を形成するリスクがあり、冠動脈に血栓が形成され瘤の末梢側が閉塞すると心筋梗塞が起こり治療介入が遅れると死亡に至ります。川崎病の罹患に伴い注意深く経過観察が必要となります。年間を通じて冬季から春季にかけて発症が多いことが特徴とされています。
川崎病の症状・診断
川崎病は、典型的な特徴とされる以下5つの主要症状があり診断基準に基づき診断を行います。
- 両側眼球結膜の充血(滲出液は伴わない)
- 口唇,舌,または口腔粘膜の変化(充血,乾燥,亀裂,苺舌)
- 四肢末梢における変化(浮腫,紅斑,落屑)
- 体幹の多形性発疹
- 頸部リンパ節腫脹(直径1.5cm以上のリンパ節が少なくとも1つ)
5日間以上の発熱に加え、上記5つの基準のうち4つが認められた場合に川崎病と診断されます。4つ未満でも動脈瘤があれば定型例となり、他の疾患が除外されれば不全型と診断されます。
急性期の血液検査では、白血球と炎症反応(CRP) 高値、低ナトリウム血症、ビリルビン値、AST、ALTの上昇、アルブミンの低下などがあります。また、冠動脈瘤形成による心血管合併症を引き起こす可能性があるため、心エコー検査により発症2~3週頃に冠動脈瘤出現の有無を診断します。心エコー検査で冠動脈の大きな変化が見られた場合は、心カテーテル検査などでさらに詳しく精査する場合があります。
川崎病 発症の原因
川崎病の発症原因は、長年にわたる研究によって遺伝学的な因子や環境因子などが複雑に関与していることが推定されていますが、未だに原因の解明には至っていません。以下は主に考えられる原因です。
遺伝的要因
川崎病は家族性の傾向があることが示されており、特定の遺伝的マーカーや遺伝子変異が関与している可能性があります。これは、特にアジア系の民族集団において、川崎病の発症率が高いことからも支持されています。遺伝的要因は、個々の免疫システムの反応性に影響を与え、病気の発症や重症度に差をもたらす可能性があります。
環境的要因
季節変動(特に春と冬)や特定の地理的地域での発症率の増加は、環境的要因が川崎病の発症に影響を与える可能性を示唆しています。これには、気候変動、汚染物質、さらには家庭内の化学物質の露出などが含まれる可能性があります。
感染症
川崎病の発症には、ウイルスや細菌などの病原体が関与している可能性が長い間考えられてきました。特定のウイルスや細菌が原因と特定されてはいませんが、これは一部の患者が感染症の典型的な症状(発熱、発疹など)を示すことから推測されています。しかし、これまでの研究では、一貫した病原体は同定されていません。これは、複数の異なる感染症が同様の免疫応答を引き起こす可能性を示唆しています。
川崎病の保存的治療・対症療法
川崎病は、生命にかかわる重大な合併症である冠動脈瘤を形成するリスクがあり、全身の炎症の軽減と冠動脈瘤形成による合併症の予防を目的として治療が行われます。
典型的な川崎病の初期治療には、大量の免疫グロブリン(IVIG)とアスピリンが含まれます。IVIGは、炎症反応を抑制し、免疫システムの異常な活性化を減少させるために使用されます。アスピリンは、その抗血小板効果と抗炎症特性により、血栓形成の予防と症状の軽減に役立ちます。重要なのは、これらの治療は病気の初期段階で最も効果的であるため、早期診断と迅速な治療開始が不可欠であるという点です。
不全型の症状を示す場合は、心臓の影響を評価するための迅速な心エコー検査と、炎症マーカーのモニタリングが特に重要です。
川崎病の外科的治療
川崎病の罹患によって、心血管合併症に伴う自覚症状や心筋虚血がある場合は、外科的治療の冠動脈バイパス手術による冠血行再建術が行われることがあります。
入院~退院後の流れと、リハビリについて
心臓手術を受ける患者の入院から退院後に至るまでのプロセスと、心臓リハビリテーションについては以下のリンクをご参照ください。
入院中のケアから、退院後の生活への適応、そして心臓リハビリテーションを通じての健康回復と生活質の向上に至るまで、ご紹介しています。
よくある質問
こちらのコラムの内容の要点を「よくある質問」からまとめています。
川崎病とは何ですか?
川崎病は、主に5歳以下の乳幼児に見られる全身性の血管炎で、未治療の場合、重大な合併症を引き起こす可能性がある病気です。
川崎病の主な症状は何ですか?
川崎病の主な症状には、両側眼球結膜の充血、口唇や舌の変化、四肢末梢の変化、体幹の多形性発疹、頸部リンパ節腫脹があります。
川崎病の診断方法はどのようなものですか?
川崎病は、特定の症状群と血液検査結果に基づいて診断されます。冠動脈瘤の有無を確認するため心エコー検査も行われます。
川崎病の治療法は何ですか?
川崎病の治療には、免疫グロブリン(IVIG)とアスピリンが用いられます。重篤な場合には、外科的治療が必要になることもあります。
川崎病の発症原因は何ですか?
川崎病の発症原因は明確には分かっていませんが、遺伝的要因、環境的要因、感染症などが関与していると考えられています。
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【参考文献】
・国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ppc/cardiology/pro05/・日本循環器学会
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2020_Fukazawa_Kobayashi.pdf
心疾患情報執筆者
増田 将
株式会社増富 常務取締役
プロフィール
医療現場支援歴:10年
《主な業務歴》
・医療現場支援歴:10年
・循環器内科カテーテル治療支援:3,000症例
・心臓血管外科弁膜症手術支援 :700症例
・ステントグラフト内挿術支援 :600症例