株式会社増富

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肥大型心筋症の治療に運動と新薬が有効

心疾患に関する情報

 アメリカ心臓病学会(ACC)とアメリカ心臓協会(AHA)による発表

アメリカの心臓病治療の専門機関であるアメリカ心臓病学会(ACC)とアメリカ心臓協会(AHA)は、肥大型心筋症(HCM)と診断された人の効果的な管理のための新しい臨床ガイドラインを発表しました。
このガイドラインでは、HCM患者自身が治療方針の決定に積極的に関わる「共同意思決定」の重要性を改めて強調し、成人および小児患者にとって最も効果的な治療法を選択できるように、最新の医学的知見に基づいた推奨事項を示しています。

肥大型心筋症(HCM)とは?

HCMは、心筋が異常に厚くなる(肥大)遺伝性の心臓病です。この肥大によって心臓が十分な血液を送り出すことができなくなり、様々な症状が現れます。
HCMは500人に1人が発症するといわれていますが、無症状のケースも多いことから、実際にはさらに多くの人がHCMを抱えていると考えられています。そのため、HCMが診断されることなく突然死に至るケースも少なくありません。

肥大型心筋症(HCM)としては、失神、胸痛、息切れ、不整脈などが挙げられます。

新ガイドラインにおける重要なポイント

今回のガイドラインは、HCMの治療と管理に関する最新のエビデンスを反映し、以下のような推奨事項が含まれています。

  • 心筋ミオシン阻害剤という新しいクラスの薬剤の追加
  • 運動療法の推奨
  • 特に小児における突然心臓死(SCD)リスクの層別化
  • 小児患者への対応

心筋ミオシン阻害剤

新しいガイドラインでは、従来の薬物療法で十分な効果が得られない、閉塞性肥大型心筋症の患者に対して、心筋ミオシン阻害剤という新しいクラスの薬剤を追加することを推奨しています。

従来の薬物療法は、HCMの症状を和らげることを目的としていましたが、心筋の肥厚そのものを抑制することはできませんでした。一方、心筋ミオシン阻害剤は心筋の肥厚に直接作用する初めてのFDA承認薬です。

心筋ミオシン阻害剤の注意点

画期的な薬剤である一方、心筋ミオシン阻害剤はFDAのリスク評価・軽減戦略(REMS)プログラムの下で厳重に管理されています。
そのため、臨床医は処方前に特別なトレーニングを受ける必要があり、患者は定期的な検査を受け続ける必要があります。

運動療法

リスクよりもベネフィットが上回る

従来、HCM患者は運動制限を指示されることが一般的でした。しかし、適切な運動がHCM患者にもたらすベネフィットが、潜在的なリスクを上回るというエビデンスが近年多数報告されています。

新しいガイドラインでは、HCM患者も健康管理の一環として、軽度から中等度の運動を積極的に行うことを推奨しています。また、HCM専門医の適切な指導のもとであれば、競技スポーツへの参加を検討できるケースもあるとしています。

突然心臓死(SCD)リスクの層別化

適切な管理が行われない場合、HCMは突然心臓死(SCD)を含む様々な合併症を引き起こす可能性があります。
新しいガイドラインでは、突然心臓死(SCD)リスクを正確に評価・管理するための推奨事項として、明確なリスクマーカーを設定しています。

具体的には、以下の要素を総合的に判断し、突然心臓死(SCD)リスクを層別化します。

  • 個々の患者の突然心臓死(SCD)リスクスコア
  • 植え込み型除細動器(ICD)の必要性
  • 患者のリスク許容度
  • 生活の質(QOL)を含む治療目標

小児患者への対応

新しいガイドラインでは、小児HCM患者に特化した推奨事項も複数提示されています。

  • 小児および青年期特有のリスク計算式を用いたSCDリスクの評価
  • 小児HCMの専門知識を持つ医療機関への紹介
  • 運動負荷試験の実施による機能的能力の判断と予後に関するフィードバック

これらの推奨事項は、小児HCM患者に対するより個別化された医療を提供し、SCDリスクを最小限に抑えることを目的としています。

まとめ

  • 画期的な新薬の登場により、これまで以上に心筋の肥厚を抑え、病気の進行を遅らせることができる可能性があります。
  • 運動療法も推奨されるようになり、患者さんがより積極的に健康管理に取り組めるようになりました。
  • 突然心臓死のリスクをより正確に予測することで、一人ひとりに最適な予防策を講じることが可能になります。

よくある質問

こちらのコラムの内容の要点を「よくある質問」からまとめています。

肥大型心筋症(HCM)とは何ですか?

HCMは、心筋が異常に厚くなる遺伝性の心臓病です。心筋の肥大により心臓が十分な血液を送り出せなくなり、失神、胸痛、息切れ、不整脈などの症状を引き起こすことがあります。

新しいガイドラインで推奨されている治療法は何ですか?

新しいガイドラインでは、従来の薬物療法に加え、心筋の肥厚を抑制する心筋ミオシン阻害剤の使用が推奨されています。また、適切な運動療法も推奨されています。

心筋ミオシン阻害剤の効果と注意点は何ですか?

心筋ミオシン阻害剤は、心筋の肥厚に直接作用する初めてのFDA承認薬で、HCMの症状を和らげる効果があります。ただし、FDAのリスク評価・軽減戦略(REMS)プログラムの下で厳重に管理されており、処方前に特別なトレーニングが必要です。

HCM患者に運動療法は推奨されますか?

はい。新しいガイドラインでは、HCM患者も適切な運動療法を行うことが推奨されています。HCM専門医の指導のもとで軽度から中等度の運動を行うことがベネフィットとなります。

突然心臓死(SCD)リスクの層別化とは何ですか?

突然心臓死(SCD)リスクの層別化は、HCM患者のリスクを評価し、適切な管理を行うための方法です。個々の患者のリスクスコア、植え込み型除細動器(ICD)の必要性、リスク許容度、生活の質(QOL)などを総合的に判断します。

【参考文献】

American Heart Association
https://newsroom.heart.org/news/exercise-new-drug-class-recommended-for-management-of-hypertrophic-cardiomyopathy

心疾患情報執筆者

心疾患情報執筆者

増田 将

株式会社増富 常務取締役

プロフィール

医療現場支援歴:10年
《主な業務歴》
・医療現場支援歴:10年
・循環器内科カテーテル治療支援:3,000症例
・心臓血管外科弁膜症手術支援 :700症例
・ステントグラフト内挿術支援 :600症例